みかんの季節と、名前の話
「みかん」は本来、皮をむきやすい小型のかんきつ類の総称ですが、いまは収穫量が圧倒的に多い温州みかんを指す言葉になっています。名前こそ中国浙江省の地名「温州」からとられていますが日本生まれで、発祥は鹿児島県の長島町とされます(農林水産省/鹿児島県)。
暦のうえでも、出はじめは月見の季節と重なります。2026年は10月23日(金)が十三夜(栗名月)。栗や豆を供えるこの夜のころ、店先には青みの残るみかんが並びます(月見の支度は中秋の名月2026はいつ?へ)。
極早生・早生・中生・晩生——みかんは4回、味が変わる
温州みかんは実が熟す時期の早さで四つに分けられ、その順どおりに店へ出てきます。品種名ではなく時期のくくりだと考えるとすっきりします。
※時期は目安。産地が南にあるほど早く、その年の天候でも前後します。品種名と区分は愛媛県「かんきつ類Q&A(種類・名称編)」、時期は産地・JAの公開情報を参照。
10月の「青いみかん」は早取りではありません
果皮に緑が残るため「まだ熟していないのでは」と見られがちですが、これはそういう品種で、早く採ったものではありません。中身は熟していて、さっぱりした甘酸っぱさとそのまま食べられるやわらかい薄皮が持ち味です。
品種ごとの食べくらべ
同じ区分の中でも、品種によって持ち味が変わります。極早生を代表する日南1号は、皮をむいた瞬間にさわやかな香りが立ち、さっぱりした甘酸っぱさが身上。果皮に青みがかった色が残るのがふつうの姿です(のま果樹園)。
早生の宮川早生・興津早生は、この2品種だけで温州みかんの栽培面積のおよそ3分の1を占める主力どころ。薄皮(じょうのう)が破れるほど薄く、口に残りにくいため、袋ごと食べても気になりません。甘みと酸味のつり合いがよく、「みかんらしいみかん」を選ぶならこの時期です(のま果樹園)。
年が明けると、主役は貯蔵に移ります。晩生の青島温州は果皮が丈夫で貯蔵に向き、12月から4月ごろまで出回ります。その青島温州の枝変わりから生まれたのが寿太郎温州で、貯蔵庫で寝かせるほど酸が抜け、味が濃くまろやかになるとされ、出荷は2月上旬から(静岡県)。冬の後半に食べるみかんは「採れたて」ではなく「寝かせたもの」——ここが年内のみかんといちばん違うところです。
数のうえでは「早生温州」が6割
数字を見る前に、統計の区分は店先の呼び方と少しずれることを先に押さえておきます。農林水産省の作物統計では、みかんを「早生温州」と「普通温州」の二つに大きく分けたうえで、早生温州の内わけとして極早生みかん・ハウスみかんを別に数えます(農林水産省)。いっぽう産地側の呼び方ではハウス・極早生・早生温州・普通温州の四つに大別し、広義の「普通温州」はさらに中生温州・(狭義の)普通温州・晩生温州の三つに分かれます(愛媛県)。
そのうえで数字です。作物統計調査(令和7年産・令和8年5月26日公表)では、全国の収穫量は65万6,300トン、出荷量は59万8,900トンで、前年産より17%多い年でした。区分で分けると早生温州が39万7,100トン(61%)、普通温州が25万9,200トン(39%)。ただしこの61%には極早生10万1,800トン(16%)とハウス1万4,000トン(2%)が含まれるので、店先で「早生」と呼ばれるものだけなら4割ほどです。それでも、みかんの層がいちばん厚くなるのが10月から12月にかけてであることは変わりません。
甘いみかんの選び方|見た目でここまで分かります
産地のJAが挙げる見分け方のうち、店先で確かめられるのは次の5点(JAみっかび)。どれもよく育った跡が外に出ているという理屈でつながっています。
皮のキメが細かく、色が濃いものを選ぶ
- 皮のキメが細かい:表面のつぶつぶ(油胞)が細かく詰まったもの。よい花が順調に育った証とされます。
- 皮の色が濃いオレンジ:日をよく浴びた果実ほど濃く染まります。ただし極早生は青みが残るのが正常。この物差しは早生以降に使います。
ヘタ(軸)の切り口が小さいものを選ぶ
- ヘタ(軸)の切り口が小さい:軸が細いと実へ送られる水分が絞られ、味が濃くなりやすいとされます。太いものは大味になりがち。ヘタの色が黄色みを帯びているものは、木でしっかり熟したしるしとされます。
まん丸より、扁平な小玉を選ぶ
- 形が扁平(横長の楕円):まん丸より平べったいもの。横に育つ時期に甘みがたくわえられるためとされます。
- 小ぶりのもの:大玉より水分が少なく、味が凝縮しやすいと言われます。箱でSサイズが人気なのはこのため。
酸味が強いときにどうするか
とくに10月の極早生は酸味がはっきり出ることがあります。手当ては「置く」「温める」「刺激を与える」の三通り。仕組みは同じで、収穫後も生きているみかんに呼吸をさせ、酸っぱさのもとのクエン酸を使わせるという考え方です。
- 数日そのまま置く:いちばん手のかからない方法。置くあいだの呼吸で酸が減ります。
- りんごと一緒に袋へ:りんご1個にみかん2〜3個をポリ袋へ。りんごが出すエチレンガスが熟すのを後押しするとされます。
- 日の当たる場所に置く:ポリ袋の口をしばって1〜3日ほど日なたへ。呼吸がさかんになるとされます。
- 温める:40度くらいの湯に10分ほど浸す、電子レンジで30秒〜1分、皮に焦げ目がつくまで焼く。熱でクエン酸が分解されるためとされます。焼きみかんが甘いのはこの理屈です。
- もむ:手のひらでよくもみ、すぐ食べずに1日置きます。強すぎると果汁が出るので、皮を割らない程度に。
保存の仕方|ヘタを下、重ねるのは2段まで
箱で買うことが多いぶん、置き方ひとつで最後の何個かの運命が変わります。押さえるのは温度・向き・重ね方の三つ。
- 適した温度はおよそ5〜10度:冬なら暖房の入らない廊下や玄関など風通しのよい涼しい場所。暖かい部屋に置きっぱなしは傷みが早く進みます。
- 冷やすなら冷蔵室より野菜室:ポリ袋に入れて2週間ほどが目安。冷やしすぎは味が落ちるので、食べる少し前に出すくらいで十分です。
- ヘタを下にして置く:ヘタ側の軸から水分が抜けやすいとされます。伏せて置くとその面が押さえられ、乾きにくくなります。
- 重ねるのは2段まで/段のあいだに紙を1枚:下の段がつぶれると傷みが広がります。新聞紙やキッチンペーパーをはさむと水分を吸ってくれます。
- 食べきれないときは冷凍:皮をむいて保存袋へ。半解凍でシャーベットのように。1〜2か月が目安です。
- 箱で買ったら、その日にいったん全部出す:段ボールを閉じたままだと、下で1個傷んだのに気づけません。取りのぞいてから並べ直すだけで、食べきれる数が変わります。
白いすじと薄皮は、取る? 取らない?
白いすじには名前があります。皮の内側の白い部分とすじがアルベド、実を包む薄皮がじょうのう、中のつぶつぶが砂じょう(さじょう)。アルベドは維管束——木から果実へ水分や養分を届ける通り道だった部分で、食物繊維や、ポリフェノールの一種であるヘスペリジンを含むとされます(JAみっかび)。口当たりが気になる人は取ってもかまいませんが、取らなければならないものではありません。
薄皮は時期によって厚みが変わります。極早生と早生はじょうのうが薄く、口に残りにくいので、袋ごと食べるならこの時期。年が明けて中生・晩生になると薄皮もしっかりしてくるので、気になればむく——という使い分けができます。
産地の代表と、時期の違い
農林水産省の作物統計調査(令和7年産)による都道府県別の収穫量は、和歌山県 14万5,200トン(22%)/愛媛県 12万1,800トン(19%)/静岡県 8万9,500トン(14%)/熊本県 7万6,800トン(12%)/長崎県 3万8,200トン(6%)。この5県で全国のおよそ7割を占めます。
- 和歌山(有田)|収穫量は22年連続で全国1位:令和7年産も14万5,200トンで首位を守りました(近畿農政局)。有田(ありだ)は1574年(天正2年)に肥後・八代から小みかん(紀州みかん)の苗木を持ち帰ったのが始まりと伝えられる古い産地で(伝来の時期や経路には諸説あり/和歌山県)、いま主流の温州みかんへ切り替わったのは1813年(文化10年)とされます。10月ごろの極早生(ゆら早生など)から年明けの晩生まで切れ目なく続くのが強みです。
- 愛媛|区分ごとに主力品種がそろう:極早生の日南1号・上野早生、早生の宮川早生・興津早生、中生の南柑20号・石地と、区分ごとに主力品種が並びます。みかんのあとに伊予柑などの中晩柑へ続くのも特徴です。
- 静岡(三ヶ日)|冬から春に強い:晩生の青島温州が主力。貯蔵しながら出荷されるため冬の後半から春先まで店に並び、年末年始の贈り物や2月・3月のみかんはここが頼りになります。沼津の寿太郎温州も、貯蔵を前提に2月上旬から出てきます(静岡県)。
- 熊本|秋の入り口から3月まで、7か月出し続ける:収穫量は全国4位。極早生温州から始まり、早生・中生・普通温州とおよそ7か月(9月中旬〜3月中旬)にわたって出荷が続きます(JA熊本果実連)。秋の入り口に「もうみかんが出ている」と感じたときの、出どころのひとつです。
- 長崎|量より質でいく産地:収穫量は全国5位。畑の地面に白いシートを敷いて水分を抑える「マルチ栽培」の普及率が全国トップクラスで、手をかけて味を濃くする方向に振っています(JA長崎せいひ)。
贈り物に選ぶときの見どころ
- 箱の大きさは世帯の人数から:ひとり・ふたり暮らしへは2〜3kg、家族向けなら5kgが扱いやすい単位。食べきれない量は、置き場所と傷みの心配ごと相手に渡すことになります。玉はS・Mが食べやすく、大玉は見栄えがするぶん皮が厚くなりがちです。
- 時期で中身が変わる前提で選ぶ:10月なら極早生のさっぱり、11〜12月なら早生のつり合い、年始なら中生・晩生の濃い甘み。お歳暮のように日どりの決まった贈り物ほど、この読みが効きます。
- のし(熨斗)とひとこと:季節のごあいさつなら「御礼」、12月は「御歳暮」、年明けは「御年賀」、お祝いには「御祝」。そこへ「ヘタを下にして涼しい所に」と添えると、届いたみかんの持ちが変わります。
量を人数から決め、届く日を選び、ひとこと添える——この順番は秋の贈り物に共通します。同じ考え方は敬老の日2026はいつ?9月21日(月)でも整理しています。
みかんのよくある質問(FAQ)
Q. 10月に売っている皮が青いみかんは、まだ早いのでは?
A. いいえ。極早生という時期の区分で、青みが残るのがふつうの姿です。中身は熟しており、さっぱりした甘酸っぱさが持ち味です。
Q. 極早生・早生・中生・晩生は、どう違うのですか?
A. 実が熟す時期の早さによる区分です。極早生が9〜10月、早生が10月下旬〜12月、中生が12〜1月、晩生が1月以降(貯蔵で春先まで)。時期が進むほど皮が厚く、甘みが濃くなります。
Q. 買ったみかんが酸っぱいときは?
A. 数日置く、りんごと一緒にポリ袋へ入れる、40度ほどの湯に浸す、といった方法で酸が減り、甘く感じやすくなるとされます。ただし糖度そのものが上がるわけではありません。
Q. なぜヘタを下にして、重ねないのですか?
A. ヘタ側の軸から水分が抜けやすいとされ、伏せて置くと乾きにくくなります。重ねるのは2段まで。置き場所は5〜10度くらいの涼しい所、冷やすなら野菜室で2週間ほどが目安です。
Q. 白いすじは取ったほうがいいですか?
A. 取らなければならないものではありません。白いすじはアルベドと呼ばれ、実へ養分を運んでいた維管束で、食物繊維やヘスペリジンを含むとされます(JAみっかび)。口当たりが気になるときだけ取れば十分です。
Q. 贈り物にするなら何kgを選べばいいですか?
A. ひとり・ふたり暮らしへは2〜3kg、家族向けなら5kgが扱いやすい単位です。玉はS・Mサイズが食べやすく、大玉は見栄えがするぶん皮が厚くなりがちです。
まとめ/次の旬は
みかんは、①区分で時期を読む(極早生→早生→中生→晩生)、②選ぶならヘタの切り口が小さく、皮のキメが細かい扁平な小玉、③保存はヘタを下にして2段まで、涼しい場所へ。この3つを押さえれば、秋の入り口から春先まで最後の一玉までおいしく食べきれます。酸味の手当ては補助で、決め手は買うときの一手間です。
秋の果物は今が旬「梨」完全ガイドや今が旬「ぶどう」完全ガイドからみかんへリレーしていきます。同じころ食卓に上がる魚なら今が旬「さんま」完全ガイドを、月ごとの旬は9月が旬の食べもの一覧が入り口です。
——次の旬予告:こよみが「柿」を持ってくる予定です。


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