りんごの旬は「8月から11月」|4つの区切りで覚える
りんごは、ひとつの季節にどっと出て終わる果物ではありません。青森県農林水産部りんご果樹課が発行している冊子『青森りんご』(令和8年3月版)によると、青森りんごは8月から11月まで品種ごとに収穫され、収穫時期によって次の4つに分類されています。
※区分と収穫時期は青森県『青森りんご』令和8年3月版。冷蔵での持ち時間は地方独立行政法人 青森県産業技術センター「りんごの旬とは」による品種群ごとの目安。
この表のいちばんの読みどころは、いちばん右の列です。収穫が遅い品種ほど、買ったあとに持つ。りんごは見た目がどれも似ているので同じ扱いをしがちですが、極早生種と晩生種では持ち時間が10倍以上ちがいます。9月に買ったりんごを「まだ大丈夫だろう」と11月まで置いておく——この失敗は、区分を知っていれば起きません。
つがる|9月上〜中旬。「早く食べきる」ためのりんご
つがるは、青森県りんご試験場(現在の青森県産業技術センターりんご研究所)が育成し、昭和50年に品種登録された早生種です。親はゴールデンデリシャスと紅玉。収穫は9月上旬〜中旬、300グラム程度で紅色に縞が入り、冊子の表現では「果肉は硬めでち密、多汁、甘味が強く、食味良好」とされています。
買い物での要点はひとつ。つがるは早生種なので、冷蔵しても1か月半〜2か月が目安です。晩生種のように何か月も置く前提で買うと、あとから食感が落ちます。9月から10月の頭に見かけたら、その2週間ほどで食べきる量だけ買う。これがつがるとのいちばん良い付き合い方です。
シナノゴールド|10月下旬〜11月上旬。黄色くて、置いておける
シナノゴールドは長野県果樹試験場が育成し、平成11年に品種登録された黄色いりんごです。ゴールデンデリシャスと千秋から生まれました(親のどちらを母とするかは資料により記載が分かれます)。長野県の農業関係試験場の解説では、昭和58年に交配し、平成3年に実が成り、平成11年に品種登録という長い道のりが紹介されています。
青森県の冊子では晩生種で10月下旬〜11月上旬収穫、350グラム程度で黄色、「香りがあり多汁で、高い糖度と十分な酸味があります」「貯蔵性に優れています」とされています。なお長野県では収穫期をもう少し幅広くとらえており、産地によって前後します。
台所での使いどころははっきりしています。酸味が残るので、加熱しても味がぼやけない。焼き菓子やコンポートに向きます。そして貯蔵性が高いので、箱で買っても追い詰められません。「甘いだけのりんごは飽きる」という人が最後に戻ってくる品種でもあります。
ふじ|10月下旬〜11月中旬。春まで店にあるのには理由がある
ふじは、農林省園芸試験場東北支場(当時は藤崎町、現在の農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門)が育成し、昭和37年に命名・登録された晩生種です。親は国光とデリシャス。収穫は10月下旬〜11月中旬、350グラム程度で、冊子は「果肉はやや粗く、果汁が極めて多く、甘酸のバランスに優れ食味良好です」としています。青森県の品種別生産割合ではふじが約半分を占めます。
ふじが特別なのは、収穫が終わってからの長さです。冊子には「収穫されたりんごは順次出荷されますが、『ふじ』のように貯蔵により翌年の8月まで出荷されるものもあります」とあります。春や夏にスーパーで見かけるりんごが、だいたいふじである理由はここ。10か月近く、貯蔵しながら出し続けているわけです。
「サンふじ」と、ただの「ふじ」は何が違うのか
店先でサンふじという名前を見かけます。これは別の品種ではなく、袋をかけずに育てた(無袋栽培の)ふじのことです。冊子の説明では、「袋をかけないで育てる方法を無袋栽培といいます。太陽の光をいっぱい浴びて育つ無袋りんごは、糖度が高く、とてもおいしく仕上がります。食べ頃は、無袋のふじで3月いっぱいまでです」。
いっぽう有袋栽培は、「まだ果実が小さい時から、袋をかけて育てる方法」で、「有袋りんごは着色が良く貯蔵性が高いことから5月以降の出荷の主役となり、年間を通じて安定した品質のりんごをお届けできます」とされています。
そのほか、覚えておくと得をする品種
主役の3つ以外にも、目的がはっきりしている品種があります。いずれも青森県『青森りんご』(令和8年3月版)の記載です。
蜜の正体|「甘い部分」ではありません
農林水産省の消費者相談のページでは、蜜入りを「果実の成熟に伴って、果肉の一部が水浸状になる生理的な現象」と説明しています。仕組みは青森県の冊子のほうが詳しく、「葉で光合成により作られたでんぷんはソルビトール(糖アルコール)に変化して、果実に運ばれます。ソルビトールは、果実にある酵素の働きによって甘みのもとになる果糖、しょ糖、ぶどう糖に変えられます」とあります。
そして熟度が進むと、「葉から果実へ運ばれたソルビトールは、果糖やしょ糖に変わることができなくなると、細胞と細胞のすきまにたまり、水分を引き寄せます。これが蜜の正体です」。続けて「蜜そのものはあまり甘くないのですが、蜜が入ったりんごは甘み成分がたくさん含まれ、熟度が進んだことを示しているのです。蜜はおいしさの証拠です」と書かれています。
蜜が入らない品種を責めても仕方がない
農林水産省は「蜜の入り方は品種によって異なり、完熟しても全く蜜の入らない品種もあります」としています。青森県りんご対策協議会はさらに具体的で、「王林」「つがる」「ジョナゴールド」などは熟しても蜜が入ることは基本的にないと明記しています。
つまり王林を切って蜜がなくても、それは未熟でも外れでもありません。蜜を期待するならふじ・北斗・ぐんま名月のように、蜜が入る品種を名指しで選ぶことです。品種を見ずに「蜜入り」だけを追うと、毎回がっかりする買い物になります。
★蜜入りには落とし穴がある:日持ちしません
もうひとつ知っておくとよいのが、蜜は消えるという事実です。青森県りんご対策協議会は、収穫後、蜜は徐々に果肉に吸収されていくが、消えても甘さは変わらないと説明しています。「買ったときは蜜があったのに、いま切ったらない」は、味が落ちたわけではありません。ここを知らないと、店に苦情を言いに行くことになりかねません。
ついでに、甘いりんごが育つ条件も冊子に図でまとめられています。日光を多く受けるほど、果実を養う葉が多いほど、色が良くつくほど、収穫を遅らせるほど甘くなる。晩生種=収穫が遅い=甘いという関係は、ここから来ています。
店での選び方|見るのはこの4つ
難しい道具は要りません。青森県の資料で説明されている性質を、売り場で使える形に並べ直すと次のようになります。
- 色よりも「地の色」を見る:赤い品種は、赤の濃さより赤くない部分(地色)が黄色っぽく抜けているか。緑が強いものは熟しきっていないことがあります。黄色い品種(王林・シナノゴールド・星の金貨)は黄色が完成形で、赤くなるのを待つ必要はありません。
- 持って重いものを選ぶ:りんごは果肉100グラム当たりの水分が83.1%(日本食品標準成分表(八訂)増補2023、青森県冊子より)。水分が抜けると軽くなります。同じ大きさなら重いほうが新鮮という単純な話です。
- 皮のベタつきは減点にしない:前述の「油あがり」です。熟しているしるしなので、むしろ食べ頃の合図として扱います。
- 大きさは用途で決める:紅玉240グラム前後、つがる・シナノスイート・王林300グラム前後、ふじ・シナノゴールド350グラム前後、陸奥430グラム、世界一500グラム程度。一人で食べきるなら小玉、切り分けて出すなら大玉。大きいほど良いわけではありません。
保存|冷蔵室に入れ、袋の口を閉じる。理由は2つあります
青森県りんご対策協議会が案内している手順は単純です。大きめで厚手のポリ袋にりんごを入れ、口を閉じて冷蔵室へ。野菜室でも構わないものの、凍らない程度で0〜5度くらいの場所のほうが鮮度を長く保てます。
口を閉じる理由は2つあります。
- ① 水分が蒸発するのを防ぐ。りんごは水分が8割以上。むき出しで置くと、しなびるのは中身が減っているからです。
- ② りんごから出るエチレンガスの影響が、ほかの野菜や果物に及ぶのを防ぐ。エチレンは成熟を進める植物ホルモンで、りんごは特に多く出します。野菜室に裸のりんごを置くと、葉物がしんなりしたり、じゃがいもから芽が出やすくなったりします。
どれくらい持つかは、冒頭の表のとおり品種群で変わります。青森県産業技術センターの説明では、冷蔵で極早生種はせいぜい2週間くらい、早生種で1か月半〜2か月、中生種で2か月〜3か月、晩生種で3か月〜8か月。加えて無袋のふじは3月まで、星の金貨は普通の栽培・冷蔵で6月までおいしく食べられる超長期の品種とされています。
数字で見るりんご|青森61%、長野18%
農林水産省の作物統計調査(令和8年5月26日公表・概数値)によると、令和7年産のりんごの収穫量は57万7,400トンで、前年産に比べ3万1,800トン(5%)減りました。出荷量は52万9,700トンで同じく2万5,200トン(5%)減。栽培面積は3万3,700ヘクタール、結果樹面積は3万2,500ヘクタールで、それぞれ前年産より4%減っています。10アール当たり収量は1,780キログラムで、前年産を30キログラム(2%)下回りました。
都道府県別の収穫量割合は、青森県が61%(35万1,400トン)、長野県が18%(10万6,400トン)、岩手県が5%(3万800トン)で、この3県で全国の約8割を超えています。
産地の内訳を青森県の冊子で見ると、令和6年産の全国生産量609,200トンのうち青森県が370,500トン。県内では弘前市を中心とした中南地域が県全体の約66%を占めます。世界に目を向けると2024年の生産量は約9,788万トンで、最も多いのは中国(5,129万トン)、日本は29万トン規模——日本のりんごは量で勝負している果物ではないことがわかります。
贈り物に選ぶときの見どころ
- 相手の人数から玉数を決める:晩生種なら数か月持ちますが、冷蔵庫に入る量かどうかが現実的な制約です。ひとり暮らしや二人世帯へ大箱を送ると、置き場所に困らせます。
- 品種名を書いて送る:「ふじ」「シナノゴールド」と分かるだけで、受け取った側が食べ方を選べます。紅玉なら「焼き菓子に向きます」とひとこと添えると、使い道に迷いません。
- 蜜入りを選んだら「早めに」と伝える:前述のとおり蜜が多いものは日持ちしません。黙って送ると、大事に取っておかれて傷みます。
- のし(熨斗)の表書き:季節のごあいさつなら「御礼」、12月に入れば「御歳暮」。時期の決まりは七五三2026は11月15日(日)|数え年・千歳飴・内祝いでも触れた、のしの考え方と同じです。
りんごのよくある質問(FAQ)
Q. 切ったら蜜が入っていませんでした。はずれだったのでしょうか?
A. 品種によります。農林水産省は「蜜の入り方は品種によって異なり、完熟しても全く蜜の入らない品種もあります」としており、青森県りんご対策協議会は「王林」「つがる」「ジョナゴールド」などは熟しても基本的に蜜が入らないとしています。また収穫後、蜜は徐々に果肉に吸収されていきますが、消えても甘さは変わりません。
Q. りんごは常温と冷蔵、どちらで保存すればいいですか?
A. 冷蔵室が向きます。大きめで厚手のポリ袋に入れて口を閉じ、凍らない程度で0〜5度くらいの場所へ。口を閉じるのは、水分の蒸発を防ぐためと、りんごから出るエチレンガスがほかの野菜や果物に影響するのを防ぐためです。
Q. 「サンふじ」は「ふじ」と別の品種ですか?
A. 別品種ではなく、袋をかけずに育てた無袋栽培のふじを指します。青森県の資料では、無袋のふじの食べ頃は3月いっぱいまで、有袋のりんごは貯蔵性が高く5月以降の出荷の主役になるとされています。
Q. 皮がベタベタしています。ワックスですか?
A. 塗ったものではありません。青森県の資料では「油あがり」と呼ばれる現象で、主成分はリノール酸とオレイン酸。りんごが成熟すると増えて皮の表面に出てくるもので、害はなく、よく熟しているしるしとされています。
まとめ/次の旬は
りんごは、①8月から11月まで、収穫時期で極早生・早生・中生・晩生の4つに分かれ、遅い品種ほど買ったあと長く持つ、②蜜そのものは甘くなく、熟度の目印。しかも蜜が多いほど日持ちしない、③保存は厚手のポリ袋の口を閉じて冷蔵室。口を閉じるのは水分とエチレンの両方のため。この3つで、りんご売り場での迷いはほとんど消えます。
秋の果物棚では、りんごの少し前に西洋なしが並びます。追熟という正反対の性格を持つ今が旬「ラ・フランス」完全ガイドと読み比べると、果物ごとの作法の違いがはっきりします。シャリシャリの食感つながりでは今が旬「梨」完全ガイド、冬に向かう柑橘のリレーは今が旬「みかん」完全ガイドへ。渋抜きという独特の手間がある今が旬「柿」完全ガイドも同じ棚のご近所です。その月ごとの旬をまとめて見たいときは10月が旬の食べもの一覧が入り口になります。
——みのりが案内するお歳暮はいつからいつまで?も公開しました。


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