さんまの季節と、名前の話
さんまは漢字で「秋刀魚」と書きます。秋にとれ、刀のように細長く銀色に光る魚——見た目そのままの、わかりやすい名前です。この字が広く使われるようになったのは比較的新しく、それ以前は別の字があてられていたとも言われます。いずれにしても、日本の秋の食卓と切り離せない魚であることは変わりません。
脂がのった一尾を七輪や魚焼きグリルで焼き、大根おろしとすだちを添えて、あつあつの白いごはんと一緒に。塩焼きという、ただそれだけの料理が秋のごちそうになるのは、さんまくらいのものです。
失敗しないさんまの選び方|売り場での見極め方
売り場で今日の一尾を選ぶときは、口先の色・背の厚み・目の澄み・体の光沢・身のかたさを見ます。次のポイントを目安にしてください。
- 口先や尾の付け根が黄色っぽい:脂がのっているサインとして知られる見方です。全体が黒っぽく地味な個体より、うっすら黄色みがさしているものを。
- 背中が盛り上がって厚い:頭の後ろから背にかけて、ぷっくり太いものを選びます。細く痩せた体つきのものは脂が少ないことが多いです。
- 目が澄んでいて濁っていない:白く濁ったり、赤くにじんだりしているものは時間が経っています。透明感のある黒い目が新鮮な目印です。
- 体全体が銀色に光り、傷がない:うろこがはがれた跡や、体にこすれた傷が少ないものを。光沢が強いほど鮮度がよい傾向があります。
- 身がかたく張っている:パックの上から押してへこんだままにならない、ピンとした個体を。手に持てるなら、頭を持ったときに尾がだらんと下がらないものが理想です。
- エラが鮮やかな赤:見える状態なら、エラの色は鮮度がいちばん出る場所。黒ずんでいるものは避けます。
近年は不漁が伝えられる年もあり、サイズが小さめだったり価格が高めだったりすることがあります。小ぶりな年は無理に塩焼きにこだわらず、蒲焼きや炊き込みごはんなど、身の少なさが気にならない調理に回すのも手です。
基本の焼き方|グリルとフライパン
さんまは焼く前の下ごしらえで仕上がりが変わります。手順自体は簡単で、覚えてしまえば毎回同じ味に近づけられます。
焼く前の下ごしらえ
- 洗って水気をしっかり拭く:表面がぬれたままだと皮が網につきやすく、身も水っぽくなります。キッチンペーパーでていねいに押さえます。
- 塩を振って10分ほど置く:高い位置から全体にパラパラと。少し置くと余分な水分と生ぐささが浮いてくるので、もう一度軽く拭き取ります。この一手間で、皮はパリッと、身はふっくらします。
- 切り込みは入れなくてもよい:昔から入れる家庭もありますが、切り込みからは脂が落ちます。せっかくの脂を楽しむなら、そのまま焼くほうがおすすめです。
魚焼きグリルで焼く
- グリルはよく予熱する:冷たい網に置くと皮がくっつきます。数分温めてから、網に薄く油を塗って並べます。
- 強めの火で、皮に焼き色をつける:両面焼きグリルならそのまま、片面焼きなら焦げ目がついたところで返します。返すのは一度だけにすると、身が崩れません。
- 盛りつけたとき表になる側から:一尾を丸ごと出すなら、頭が左・腹が手前になる向きが基本。その面を先に焼くと、きれいな焼き色が表に来ます。
フライパンで焼く
- クッキングシートを敷く:油をひかずにシートを敷けば、皮がはがれず、片づけもラクになります。
- ふたはしない、または最後だけ:ふたをすると蒸し焼きになり、皮のパリッと感が失われます。中まで火を通したいときだけ、最後に短時間だけ使います。
- 出た脂はこまめに拭く:脂がたまると揚げ焼きのようになります。ペーパーで軽く吸い取ると、すっきりした焼き上がりに。
ワタ(内臓)は食べる? 骨をきれいに外す食べ方
さんまが他の魚と違うのは、内臓ごと食べられるとされている点です。さんまには胃にあたる器官がなく、食べたものが短時間で体外へ出ていくため、内臓に餌が残りにくいと言われています。とはいえ、これは鮮度がよいことが前提。ほろ苦いワタが好きな人は多い一方、苦手な人も当然います。
- そのまま焼いて食べる:もっとも一般的。苦みを大根おろしとしょうゆで受け止めます。
- 焼く前に取り除く:苦手なら、腹に切れ目を入れて取り出してから焼けば問題ありません。子どもがいる食卓ではこの方法が無難です。
- 鮮度に不安があるときは食べない:時間が経ったものほど、苦みや傷みが出やすくなります。無理をしないのがいちばんです。
骨をきれいに外す食べ方
一尾を上手に食べられると、食卓での印象がまるで変わります。順番はかんたんです。
- まず背骨に沿って、箸で一本線を引く:頭側から尾に向かって、皮に浅く切れ目を入れます。
- 上半分(背側)から食べる:線から上の身を、頭側から順にほぐしていきます。
- 下半分(腹側)を食べる:続いて線から下の身へ。腹骨は箸でそっと外します。
- 骨を持ち上げて外す:尾を軽く押さえ、頭ごと背骨を持ち上げると、身から骨がすっと離れます。あとは残った身を食べるだけです。
保存の仕方|買った日・翌日・作り置き
さんまは足の早い魚です。買った日に食べるのが基本ですが、そうもいかない日のために保存の型を覚えておくと無駄がありません。
- 当日中に食べるなら:冷蔵室でも野菜室でもなく、いちばん冷たい場所へ。ペーパーで包み、ポリ袋に入れて冷気の当たる棚に置きます。
- 翌日に回すなら内臓を取る:頭と内臓を取って洗い、水気をしっかり拭いてから塩を振って包みます。内臓を残したままより日持ちがよくなります。
- 冷凍するなら下処理してから:内臓を取り、洗って水気を拭き、1尾ずつラップで包んで冷凍用袋へ。空気を抜くのがコツで、目安はおおむね2〜3週間。長く置くほど風味は落ちます。
- 解凍は冷蔵庫でゆっくり:常温に出すとドリップが出て、うまみが逃げます。前の晩から冷蔵庫に移しておくのが確実です。
- 作り置きにするなら味をつけて:蒲焼きや南蛮漬け、みりん干しにしておくと日持ちが延び、弁当のおかずにも使えます。
塩焼きだけじゃない|手軽な食べ方・簡単レシピ
塩焼きが王道ですが、少し手を加えるだけで表情が変わります。骨が気になる人にも食べやすいものを中心に挙げます。
- さんまの蒲焼き:三枚におろした身に薄く粉をまぶして焼き、しょうゆ・みりん・砂糖のたれをからめるだけ。骨がないので子どもにも食べやすく、丼にもなります。
- さんまご飯(炊き込み):焼いたさんまを、しょうがとしょうゆを加えたお米の上にのせて炊きます。炊き上がったら骨を外してほぐし、混ぜるだけ。秋の香りがごはん全体に移ります。
- 竜田揚げ:しょうゆとしょうがで下味をつけ、片栗粉をまぶして揚げます。骨まわりが気にならず、冷めてもおいしい一品です。
- 南蛮漬け:揚げたさんまを、酢・しょうゆ・玉ねぎのつけ汁に漬けます。さっぱりしていて日持ちもよく、作り置きに向きます。
- つみれ汁:身をたたいて、みそ・しょうが・片栗粉と混ぜて団子に。骨が苦手な家族がいる家でも、さんまの味をしっかり楽しめます。
添えるものの定番は大根おろしとすだち・かぼす。脂の強さを受け止めてくれて、後味が軽くなります。さっぱりした果物を食後に合わせるのもおすすめで、同じ時期なら今が旬「梨」完全ガイド|幸水・豊水の選び方・シャリシャリを保つ保存と、喜ばれる贈り物や今が旬「ぶどう」完全ガイド|品種の選び方・皮ごと問題・保存と、喜ばれる贈り物が食卓によく合います。
今が旬「さんま」の時期・産地・栄養
さんまの漁は夏の終わりごろから始まり、9〜10月が最盛期。秋が深まるにつれて、店頭に並ぶ数も増えていきます。北の海から南下してくる魚なので、時期が進むほど漁場が南へ移っていくのが特徴です。一般に、南下したものは脂が落ちていくと言われ、脂ののりを狙うなら旬の入り口から中ごろが狙い目とされています。
主な水揚げ地
よく知られるのが北海道(根室・釧路)、岩手県(大船渡)、宮城県(女川・気仙沼)、千葉県(銚子)など。夜の海で強い光を使って魚を集める棒受け網(ぼううけあみ)漁が代表的な漁法で、季節が進むにつれて水揚げ港が北から南へ移っていきます。産地の名が付いた「生さんま」が並ぶのは、鮮度を保ったまま運べる距離だからこそです。
なお近年は、さんまの漁獲量の減少や小型化が伝えられる年が続いています。値段が高めの年や、細身の個体が多い年もあるため、その年の並びを見て調理法を選ぶのが現実的です。太い一尾が手に入った年は、迷わず塩焼きに。
栄養の話
さんまは青魚の代表格で、脂質にDHA・EPAといった脂肪酸を含みます。ほかにビタミンB12や鉄、ビタミンDなども含まれる食材として知られています。ワタ(内臓)にも栄養があるとされ、苦みごと楽しむ人が多いのはそのためです。※特定の効能を保証するものではなく、バランスのよい食事の一部としてお楽しみください。
贈り物・取り寄せに選ぶなら
さんまを贈り物や取り寄せで選ぶなら、次の3つが扱いやすい形です。
- 干物・開き:焼くだけで食卓に出せて、冷凍で日持ちもします。枚数を選べるので、世帯人数に合わせやすいのも利点です。
- みりん干し・味付け:ごはんのおかずとしてそのまま完成しているため、調理の負担がありません。年配のご家庭にも向きます。
- 冷凍の生さんま(産地直送):鮮度のよい状態で凍らせたもの。塩焼きを楽しみたい相手向けですが、冷凍庫の空きを確認してから送るのが親切です。
魚介の贈り物全般に言えることですが、下処理が必要なものは相手を選びます。同じ海の幸でも、殻付きのものは扱いに慣れが要ります。その点は今が旬「岩牡蠣」完全ガイド|夏が旬の理由・選び方・殻の開け方と、喜ばれる贈り物でも触れています。届いてすぐ食べられる形を選ぶ——それだけで喜ばれ方が変わります。
さんまのよくある質問(FAQ)
Q. 脂がのったさんまの見分け方は?
A. 口先や尾の付け根が黄色っぽく、背中が厚いものが目安とされています。同じ長さなら、細いものより太いものを選ぶと満足度が高くなります。
Q. ワタ(内臓)は食べても大丈夫?
A. さんまは内臓ごと食べられる魚として知られています。ただし鮮度がよいことが前提で、苦手な場合は焼く前に取り除いてかまいません。時間が経ったものは無理に食べないでください。
Q. 焼くときに切り込みは必要?
A. 入れなくても焼けます。切り込みからは脂が落ちるため、脂を楽しみたいならそのままのほうがおすすめです。しっかり火を通したいときだけ、浅く入れます。
Q. グリルに皮がくっついてしまいます。
A. 網をよく予熱し、薄く油を塗ってから置くとくっつきにくくなります。表面の水気をしっかり拭くことも効果的です。フライパンならクッキングシートを敷く方法が確実です。
Q. 冷凍したさんまはどれくらい持ちますか?
A. 内臓を取って水気を拭き、1尾ずつラップして冷凍した場合でおおむね2〜3週間が目安です。解凍は冷蔵庫でゆっくり行うと、うまみが逃げにくくなります。
Q. さんまは刺身で食べられますか?
A. 鮮度のよいものは刺身でも食べられますが、刺身用として売られているものを選ぶのが基本です。青魚には寄生虫がいることがあるため、心配なときは加熱して食べましょう。
Q. 小さいさんましか売っていないときは?
A. 塩焼きにこだわらず、蒲焼き・竜田揚げ・炊き込みごはんなど、身の量が気になりにくい調理に回すのがおすすめです。骨が気になる場合はつみれ汁も向きます。
まとめ/次の旬は
さんまは9〜10月が最盛期。選ぶなら口先の黄色み・背の厚み・目の澄み、焼くなら塩を振って10分置き、水気を拭いてから強めの火で、保存は内臓を取って1尾ずつ冷凍。この3つを押さえれば、秋のさんまを最後までおいしく味わえます。贈り物にするなら、干物やみりん干しなど焼くだけで食卓に出せる形を選ぶのが親切です。
秋は海も畑もにぎやかになる季節。脂ののった魚のあとには、みずみずしい果物を——そんな組み立てで食卓を考えると、旬がもっと楽しくなります。


コメント